名古屋高等裁判所 昭和54年(行コ)3号 判決 1982年12月08日
控訴人(原告) 滝政盛 外一名
被控訴人(被告) 江南市土地改良区 愛知県知事
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一当事者双方の申立
(控訴人ら)
一 原判決を取消す。
二 主位的請求
1 被控訴人愛知県知事が昭和四七年一月一四日付同県公報第六二一八号をもつて認可公告した被控訴人江南市土地改良区第二工区の換地計画につき、被控訴人江南市土地改良区が原判決添付第一目録(一)記載の土地に対し換地として同第二目録(一)記載(但し現在の表示は本判決別表のとおり)の土地を、同第一目録(二)記載の土地に対し換地として同第二目録(二)記載(右同)の土地を定めた換地処分は無効であることを確認する。
2 被控訴人愛知県知事が同第一目録(一)記載の土地につき同第二目録(一)記載(前同)の土地を、同第一目録(二)記載の土地につき同第二目録(二)記載(前同)の土地を換地とする旨の被控訴人江南市土地改良区第二工区の換地計画に対して、昭和四七年一月一四日付同県公報第六二一八号をもつて公告した認可処分は無効であることを確認する。
三 予備的請求
1 被控訴人江南市土地改良区の前記換地処分はこれを取消す。
2 被控訴人愛知県知事の前記認可処分はこれを取消す。
四 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
(被控訴人ら)
主文と同旨。
第二当事者双方の主張及び証拠関係
次に記載するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する(但し原判決八枚目裏八行目に「図面イ」とあるを「図面(一)イ」と補正する。)。
一 控訴人らの主張
1 原判決五枚目表初行から四行目までの主張を次のとおり改める。
控訴人ら先代亡滝昌弘は被控訴人改良区第二工区内に原判決添付第一目録(一)(二)の土地(以下これらを併せて本件従前地という。)を所有していたところ、昭和四七年一月一四日請求原因第二項記載の如き換地処分を受けた。右換地中(一)の土地(原判決添付第二目録(一)の土地)については、右昌弘の昭和四八年二月一五日の死亡に伴い第一審原告滝ふじゑがこれを相続したが、同人も昭和五二年九月二〇日に死亡し、これに伴い控訴人滝政盛がこれを単独相続した。なお同土地は、その後別表(一)欄の如く地名及び地番が変更されている。又、右換地中(二)の土地(原判決添付第二目録(二)の土地)については、前記昌弘の死亡に伴い控訴人滝政盛、同滝憲三が共同相続したのち、別表(二)欄記載のとおり昭和五四年から同五六年にかけ、分筆ないし地番変更があつた外、同五番及び四番の土地は昭和五四年二月二二日の共有物分割により同月二六日付をもつてその全部が控訴人滝憲三の単独所有となり、同三番の土地は右共有物分割により右と同一日付をもつて控訴人滝政盛の単独所有となつた。
2 控訴人らは、宅地たる本件従前地か本件改良地区内に編入されたことにつき、亡昌弘がこれに同意したとの被控訴人らの主張を強く否認するものであるが、仮に何らかの理由により編入されるとしても、それは従前地のうち道路敷となる部分に限定されるべきである。
又、本件換地処分に伴う減歩については、既述のとおり本来は減歩さるべきではないが、仮に然らずとしてもそれは道路敷部分の三%であるべきであり、百歩譲つても従前地の三%であるべきであつて、いずれにせよ農地なみの減歩を行つたことは違法である。
二 被控訴人らの主張
1 控訴人ら主張1の事実は認める。
2同2の主張はいずれも争う。
三 主張の撤回
控訴人らは、当審において、本件換地処分についての通知欠缺の主張(原判決五枚目裏二行目から四行目まで)を撤回した。
よつて、原判決事実摘示のうち、右の部分及び左の各部分を削除する。
1 原判決八枚目表終りより四行目の「被告改良区が」以下五行目の「いないこと、」まで。
2 同一五枚目裏初行から一六枚目表終りより四行目まで。
3 同一八枚目表五行目から八行目まで。
四 新たな証拠関係
当審における書証及び証人等各目録記載のとおり。
理由
当裁判所もまた、当審において取調べた各証拠を考慮に入れても、控訴人らの本訴請求は失当と判断するものであつて、その理由は、左に附加する外、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する(但し、原判決二二枚目表三行目から同裏二行目までを削除し、同二八枚目表二行目から三行目にかけて「被告改良区」とあるを「被告改良区第二工区役員会」と補正する。)。
一 控訴人ら主張1の事実は、当事者間に争いがない。
二 控訴人らは、当審においても、殊に本件従前地の編入及び農地なみ減歩に関する亡昌弘の同意・承諾の有無を争うので検討するに、確かに本件については、右同意が文書化されていないこと、第二工区の役員会会議録に右同意の旨を明記したものが存しないこと、更には当事者の一人である昌弘は既に死亡し、他方当事者で当時の被控訴人改良区代表者兼本件第二工区長であつた訴外大池典三もまた、被控訴人側の主尋問終了後、控訴人の反対尋問続行中に死亡し、そのため右証言の信憑性につき十分な吟味が必ずしも実施されていないことなど一抹の疑問の余地が存しないわけではない。
しかしながら、本件を仔細に観察すると、まず(一)原判決の説示にもあるとおり、亡昌弘は、被控訴人改良区の一時利用地指定後、その対象となつた従前地の一部を他に売却していること(原判決二八枚目表五行目から同裏五行目まで、(二)原判決添付図面(二)の換地前の土地のうち一―二六(一六六坪)は、亡昌弘が訴外盛林佐助に坪一〇円で賃貸していたところ、本件換地処分に伴う道路造成のためその地積が一三三坪に減じたが、地代は逆に坪二〇円に増額されていること、又同一―一の一部六二坪半も、昌弘が訴外前田登己雄に坪一二円で賃貸していたが前同様の理由で四五坪に減じたものの地代はむしろ二〇円に増額されていること(以上、当審における控訴本人滝政盛尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第五二号証の一ないし三及び右本人尋問の結果による。)、(三)亡昌弘と同一の立場(所有する従前地が宅地)であつた訴外佐橋義尚は、江南市の斡旋で替地を取得して事態を解決しているが、昌弘はかかる方法を全くとつていないこと(原審および当審における控訴本人滝政盛尋問の結果による。)、その他原判決挙示の昌弘の行動等を併せ考えると、昌弘と第二工区役員会間に前記合意が存したことが充分推認され、これを被控訴人改良区が引継いで爾後の諸手続が進められたことが認められるのであつて、換言すれば、本件については、その編入・減歩につきこれを直接に証する書面などが存しないとの一事をもつて、前記合意の存在の推認を未だ覆すに足りないものというべく、又右合意の存在及び原判決説示のとおり幅員一五メートルの道路の存在は本件換地処分の適法性を妨げるものではないことからみて、控訴人らの当審主張のうち道路敷に関する部分もまた失当というべきである。
よつて、控訴人らの訴等を却下又は棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、行訴法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 小谷卓男 寺本栄一 三関幸男)
別表<省略>